冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「そう考えたらきっと、この子は神様が遣わせてくださった天使に違いないと思ったの。もちろんこんなの、この子からすれば都合のいい考えで、いい迷惑かもしれないけれど」


 それでも、平和を願う彼との子であることが、何よりの理由に思えて仕方がないのだ。


「だから私は、お父様と戦うわ。何を言われようとも、この子だけは絶対に守ってみせる。私は、この子の母になる」


 キッパリと言い切ったリリーは、再びゆっくりと顔を上げた。

 そして改めてソフィアと対峙すると、今にも泣きそうに顔をゆがめた。


「でも、ソフィア……ごめんなさい。あなたには、きっと迷惑をかけてしまう。けれど今回のことは、あなたも知らなかった、私だけの罪としてお父様には説明するから──」

「──いいえ、リリー様。ソフィアも、同罪でございます!」

「ソフィア……」


 リリーの言葉を遮って、ソフィアは有無を言わさぬ力強い口調で答えた。

 そして姿勢を正すと、一度だけ深く頭を下げる。

 懐妊を知り、本来ならば誰よりも不安を感じるのはリリーのはずだ。

 けれどリリーには子の命を奪うなどという考えは微塵もなく、お腹の子を守ると言い切った。

 さらには自分がそうすることで、戦争を阻止できるのではということまで考えたのだ。

 どこまでも高潔なリリーを前に、胸を打たれたソフィアは改めて彼女に仕える自分を誇らしく思った。

 そして、彼女の決断は自分の決断に等しいと、侍女として彼女を支え続けることを誓いなおした。


「そもそも、あの晩のことは忘れるべきだと最初にリリー様に申し上げたのは私です。だからどうか、最後まで私もリリー様にお供させてください」


 迷いを振り払って告げられた言葉を聞いたリリーの目には、また、ゆらゆらと美しい涙が滲んだ。

 けれどリリーは涙がこぼれ落ちる前に瞬きをして顔を上げると、自分よりも頭ひとつ小さいソフィアの身体をで抱きしめ今できる精いっぱいの力で抱きしめた。


 
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