冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「……リリー様、もしや、あのお話を気にしておられるのですか?」
「え……?」
そのとき、不意にソフィアに声をかけられたリリーは、弾かれたように顔を上げた。
視線の先のソフィアは心配そうに、リリーの顔を覗き込んでいる。
「あのお話は、リリー様が気に病むようなことではありませんよ」
ソフィアの言う〝あの話〟とは、現在のウォーリック王国の情勢のことだ。
この秘密の花園内から出ることを許されないリリーも、ソフィアや、たまにお忍びでやってくる兄のアイザックを通して、ウォーリックの情勢について聞く機会があった。
「確かにリリー様が、グラスゴー王国の現国王であられるエドガー様のもとへと嫁いでいれば、多少なり状況は変わっていたかもしれません。けれどエドガー様は最初から、ウォーリックを裏切るつもりだったに決まっております」
複雑な表情で言ったソフィアは、庭園の森を抜けた先にある王宮を見つめた。
この三年、結局、大国・ラフバラとの和平話は平行線なままで、なんの進展も見られずにいる。
その上、当初手を組むはずだったグラスゴー王国に、ウォーリック王国は国土と兵力を狙われるという最悪の事態に陥っていた。
「グラスゴー王国のエドガー国王は、ラフバラを出し抜く機会を虎視眈々と狙っているとか。そしてそのために、ウォーリックを自国の支配下に置こうとお考えだと……アイザック様は申しておりました」
ソフィアの言葉を聞いたリリーは、小さなオリビアの身体をギュッと抱きしめた。
今、ウォーリックはラフバラよりも、エドガーが治めるグラスゴー王国に平和を脅かされているのだ。
もとよりエドガーは、リリーとの政略結婚が成立しようがしなかろうが、ウォーリックを自国の支配下に置くつもりだったに違いない。
そしてゆくゆくは、リリーの父であるウォーリック国王と同じく、ラフバラに挑もうと目論んでいた。