冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 


「問題は、ラフバラが両国に対して、どのような決断をくだすかよね」


 呟いたリリーは、オリビアの髪を撫でながら眉根を寄せた。

 肝心の大国ラフバラは、両国の出方を伺っているという状況だ。

 しかし今、三国の中で最も危うい立場にいるのは間違いなく、リリーたちがいるウォーリック王国に違いなかった。


「それぞれの国の動きによっては、ここもいつ、危うくなるかわからないわ」

「おかーたま?」


 現状を憂うリリーを、彼女の腕の中にいる幼いオリビアが不思議そうに見上げた。


「おかーたま! おかーたま! ニッコリよ!」

「オリビア……」


 自身を死んだことにしてまで守った尊い命。

 けれど今、その小さな命だけでなく、彼女を取り巻く者たちの命さえ危ぶめる状況が迫ってきている。


「そうよね、オリビア。嘆いてばかりでは、何も変わらないわ」


 オリビアを抱きしめる腕の力を強めたリリーは、花の香りがする幼い娘の黒髪に口元を埋めた。

 いざというときに自分がするべき決断を、リリーは心の奥で確かめる。


「……大丈夫よ。何があっても、あなたのことはお母様が守るから」


 ざわざわと、木々がささやくように揺らめいた。

 空に浮かぶ雲は太陽を隠して、リリーたちの足元に大きな影を落としていた。



 ✽ ✽ ✽



「リリー様、大変でございます……!」


 そして、その日は突として訪れた。

 豊穣の女神マイアの祭りを翌日に控えた昼下がり、グラスゴーの兵が攻め入ってくるという情報を聞きつけたソフィアが、リリーたちのもとへと知らせにきたのだ。

 
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