冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「……ふっ、変わらないな」

「え……?」

「いや……いい。確かにきみの、言うとおりだ」


 と、騎士はそんなリリーを見て不意に目を細めると、慣れた様子でひらりと身軽に馬から降りた。

 そして馬を宥めて近くの木に繋いだあとで、改めてリリーと対峙する。

 そんな騎士の一挙一動を、リリーは呆然としながら眺めていることしかできなかった。


「名乗る前に、ひとつ、質問をさせてくれ。もしかして、きみは俺を覚えていないのか?」

「あなたを?」

「いや……。そうか、覚えていないなら構わない。いかにも、俺はラフバラ王国・聖騎士団の騎士団長を務める──リアム・クラークだ」

「リアム・クラーク……」


 ラフバラの騎士──リアムの灰色の目には今、リリーの姿だけが映されていた。

 対してリリーは、リアムから一秒たりとも目をそらせない。


(私が覚えていないなら、って……。もしかして私はこの人と、以前にどこかで会ったことがあるというの?)


 疑問が、リリーの脳裏をかけ巡る。

 リアムは改めて見ると、酷く整った顔立ちをした男だった。年齢は二十代後半だろうか。落ち着いた雰囲気は、リリーよりも年上であることを連想させる。

 騎士はまるでこの世のものではないような、肌がゾクリと粟立つ美しさを備えていた。

 こんな男に会えばきっと、必ず印象深く彼を覚えているはずだ。


(それに、騎士団長って──)


 今、リアムは自身を聖騎士団の騎士団長であると言った。

 つまり、ラフバラ国王が絶大な信頼を置く聖騎士団を率いているのが今、目の前にいる男、リアムということで間違いない。

 リアムこそが、【冷酷無比】と名高い聖騎士団の騎士団長なのだ。

 思いもよらない事実を突きつけられたリリーは、今度こそ狼狽を隠せず、うまく言葉を発することができなくなった。

 
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