冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「リリー様……ですが、オリビア様は……」
「……ええ。彼が何故、私だけでなくオリビアまで連れてくるように言ったのかはわからないけれど、当然オリビアはここに置いていくわ。この子も、疲れたはずだもの。これ以上の負担は絶対にかけられないし、怖い思いはさせたくないから」
そう言うとリリーは、眠るオリビアの額にキスをした。
寝顔はまるで天使のようで、オリビアを守るためならば自分はどんな目に遭おうとも大丈夫だと、覚悟が決まる。
「それじゃあ、いってくるわ。ソフィア、オリビアのこと、お願いね」
そうしてリリーはナイトドレスにショールを羽織ると、ローガンの案内のもとリアムが待つ部屋へと向かった。
「……入れ」
部屋の前につき、ローガンが中に声をかけると、すぐに耳に心地の良い低音が返ってきた。
それは間違いなくリアムの声で、リリーの身体には改めて緊張が走って身体がこわばる。
「失礼いたします」
けれどそんなリリーを他所に、ローガンはリリーが部屋の中に入ったことを確認すると扉を閉め、さっさとその場を去ってしまった。
(やっぱり、この邸の主はリアムだったのね……)
取り残された部屋の中で、リリーは目の前に立つ男を静かに見据えた。
広々とした部屋の内装はアンティーク調に纏められており、屋敷の外観と同じく気品に満ち満ちている。
大きな窓の前には重厚なデスクが置かれており、リアムはそのそばに佇んでいた。
「……オリビアはどうした」
神秘的な灰色の瞳がリリーを捉えて、僅かに細められる。
相変わらず左目には黒い眼帯がつけられていて、表情を読み取るのは難しい。
リアムの質問にリリーの心臓は一瞬ドキリと大きく跳ねたが、リリーは胸の前で両手を握りしめると精いっぱい平静を装って口を開いた。