冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「ど、どうして、あなたがあの子にそんなものを、わざわざ?」
「うん?」
「いえ……なんでもないわ。でも……」
リリーはリアムに出会ってからもうずっと、混乱し続けている。
今、目の前にいる男は間違いなくラフバラの聖騎士団の騎士団長を務める男だ。
冷酷無比で血も涙もない男だと、近隣諸国に名を轟かせている男なのだ。
(それなのに、そんな人が任務終わりに可愛らしいうさぎのぬいぐるみを、買って帰ってきたですって?)
にわかに信じられない。
だが、リアムが今、どうしてそんな嘘をつくのかも、リリーにはまるで検討がつかなかった。
「オリビアにはこれだが、きみにも、これを──」
「……ごめんなさい」
「え?」
「そのぬいぐるみは、受け取れない。あの子にも……できれば今後、なるべく会ってほしくないわ」
リリーはリアムの言葉を切ってそう言うと、パッと彼から顔を逸らした。
「昨日、馬から助けてもらっておいてなんだけど、あなたにはあの子に……オリビアには、触れてほしくないの」
緊張のせいで指先は冷たくなっている。
それでもリリーは愛する娘のために勇気を振り絞り、必死に言葉を紡ぎ続けた。
「あなたはラフバラの聖騎士団の騎士団長。これまで、多くの人の命を手にかけてきたのでしょう? そんなあなたの血に濡れた手で、これ以上、私の命よりも大切なあの子に触れてほしくない」
こんなことを言えば、間違いなくリアムを怒らせてしまうだろう。
けれど口にしたことは本心で、娘を想う母ならば言わずにはいられないことでもあった。