あたしを撫でる、君の手が好き。
思わずぎゅっと目を閉じると、あっくんが左の耳に触れるくらいに唇を寄せてきた。
「────み」
はっきりと聞こえてきたわけではない。だけど、何年かぶりにあっくんに名前を呼ばれたような気がする。
そう思ったら、嬉しさと好きの気持ちが抑えきれなくて、堪らなくなった。
「あ、さと」
幼稚園の頃からずっとそばにいたのに、その名前をちゃんと呼ぶのは初めてだ。
緊張でドキドキが止まらなくて。唇から零れた声が途切れて掠れる。
それを揶揄うみたいに、あっくんがあたしの耳元でククッと笑った。
「シロ、よく聞こえない」
聞こえない、なんて。絶対嘘だ。こんな近い距離で呼んだのに、聞こえないはずがない。
「ちゃんと呼んだよ」
小さな声で抗議したら、あっくんがふわっと背中から抱きしめてきた。
「よく聞こえなかったんだってば。だから、もう一回。こっち向いて呼んで?」
心地良い甘さをのせたあっくんの声が、あたしの胸を締め付けて揺さぶった。