あたしを撫でる、君の手が好き。

「ちょっと、ぐちゃぐちゃにしすぎ!」

むっとして唇を尖らせたあたしを見下ろして、あっくんがくくっと笑う。


「ついでに、シロの好きなのも買ってきていいよ」

あたしの頭から手をおろしたあっくんが、100円玉を握りしめているあたしの手を指さす。

あっくんがおつかいと託けてあたしに渡してきたのは、400円。人のことをパシらせるくせに、あっくんはいつもちゃんとあたしの分のお金を余分に握らせてくる。

あたしはそういう、あっくんの遠回しに優しいところが好きだった。


「わかったよ。シュワシュワしたやつね」

わざと面倒くさげにそう言って顔を顰める。

渡された400円を握り直しながら、戻ってくるときにペットボトルを振るのはやめておいてあげようと思った。

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