あたしを撫でる、君の手が好き。
◇
購買横の自動販売機でペットボトルのコーラを2本と自分の分のミルクティーを買って戻ってくると、ほとんどのクラスメートが教室からいなくなっていた。
さっきまで、描きかけの体育祭用の横断幕が教室いっぱいに広げられて、絵の具の匂いがしていたのに。あたしがジュースを買いに行っている間に、片付けられてしまったらしい。
「るみ!どこ行ってたの?一緒に部活に行こうと思って探してたんだよ」
ペットボトルを3つ抱えて立っていると、帰る準備を整えた桃佳が歩み寄ってきた。
そういえば、今日は桃佳と一緒に入っている茶道部の活動日だ。
「ごめん、ちょっとおつかい行ってて」
へらっと笑うと、桃佳があたしの抱えているペットボトルを見て眉を顰めた。
「え、それ全部、岸に頼まれたの?」
「あっくんのはコーラひとつだけ。あとは、富谷くんの分とあたしの分」