あたしを撫でる、君の手が好き。



購買横の自動販売機でペットボトルのコーラを2本と自分の分のミルクティーを買って戻ってくると、ほとんどのクラスメートが教室からいなくなっていた。

さっきまで、描きかけの体育祭用の横断幕が教室いっぱいに広げられて、絵の具の匂いがしていたのに。あたしがジュースを買いに行っている間に、片付けられてしまったらしい。


「るみ!どこ行ってたの?一緒に部活に行こうと思って探してたんだよ」

ペットボトルを3つ抱えて立っていると、帰る準備を整えた桃佳が歩み寄ってきた。

そういえば、今日は桃佳と一緒に入っている茶道部の活動日だ。


「ごめん、ちょっとおつかい行ってて」

へらっと笑うと、桃佳があたしの抱えているペットボトルを見て眉を顰めた。


「え、それ全部、岸に頼まれたの?」

「あっくんのはコーラひとつだけ。あとは、富谷くんの分とあたしの分」


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