あたしを撫でる、君の手が好き。
「るみ、まさか、富谷にまでパシリに使われてるの?」
桃佳がそう言って、憐れんだ目であたしを見てくる。
「違うよ。これはちょっと成り行きで。それよりモモちゃん。あっくん知ってる?」
「あー。岸だったら、あそこ……」
教室に姿が見当たらないあっくんの所在を訊ねたら、桃佳がなんだか気まずげに廊下を指さした。
「廊下?気付かなかった」
「あ、でも今は……」
言葉を濁しながら引き止めようとする桃佳の態度を不審に思いながら、廊下に飛び出す。
そのとき初めて、桃佳があたしにはっきりとものを言わなかった理由がわかった。
教室の前の廊下に、確かにあっくんはいた。だけどそのそばに徳永さんもいたのだ。
何を話しているのかはよくわからないけれど、片手で口元を押さえて楽しげに笑う徳永さんが、もう片方の手であっくんの腕を気安く触る。