あたしを撫でる、君の手が好き。

その触り方が、確実に友達同士のそれとは違う。

徳永さんは、あたしの目から見てもはっきりとわかるくらいに、男の子としての好意を持ってあっくんに触れていた。


「るみ、徳永さんのこと知ってる?うちの学年の男子からわりと人気のある、サッカー部の美人マネージャー」

あたしのあとから廊下に出てきた桃佳が、遠慮がちに話しかけてくる。


「うん、名前と顔は知ってる」

「そっか。徳永さん、隣の組の体育祭委員なんだよ。最初の委員会で顔を合わせたときから、たぶん岸狙い」

「え?」

「岸と富谷が仲良いでしょ?だから、富谷づてに岸に接近してるみたいだよ」

全然知らなかった。

桃佳から知らされた事実に愕然とする。


「そ、なんだ……どうしよう」

「だから言ったじゃん。ほかの子に横から攫われたらどうすんの、って」

「だって……」

桃佳の言葉に、ペットボトルを抱えた手が震える。


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