あたしを撫でる、君の手が好き。
「どういたしまして」
ふふっと笑い返したとき、富谷くんの後ろから誰かが近付いてきて、その肩をつかんだ。
ぐっと強い力で富谷くんが横に押しやられ、その後ろから、さっきまで徳永さんと話していたはずのあっくんが顔を出す。
富谷くんに代わってあたしの前に立ったあっくんは、無表情で、ひったくるようにあたしの腕からコーラのペットボトルをひとつ奪った。
「なんだよ、亜聡。シロちゃんに礼くらい言えよな」
急に押しやられた富谷くんが不満げな声を出す。
あっくんは不貞腐れた顔の富谷くんを横目に見ると、あたしの頭を思いきりぐしゃぐしゃと撫でてきた。
「何してんの、亜聡?」
「ん、コーラのお礼。シロは俺が撫でたら喜ぶ」
ぽかんとしている富谷くんに、あっくんが真顔でそう答える。
その発言が完全に犬扱いだから、恥ずかしかった。
富谷くんだけでなく隣にいる桃佳までもが、あたしの頭をわしわしと撫でるあっくんのことを物珍しげに見ている。