あたしを撫でる、君の手が好き。

もともと体調は悪くなかった。

だけど、あっくんの冷たい態度に落ち込んでいて、昼休み以降は水分を摂るのを怠ってた。

頭がふらふらするのは落ち込んでいるせいだと思っていたけれど、熱中症になりかけていたのかもしれない。


「飲める?」

あっくんがスポーツドリンクを差し出してくる。

コクっと頷くと、あっくんがペットボトルの蓋を緩めてからあたしに渡してくれた。


「ありがとう……」

あっくんがくれたスポーツドリンクはよく冷えていて、喉に沁みる。それをゆっくりと飲むあたしの横顔を、あっくんが無言でジッと見つめていた。

静かな保健室で、あたしが喉を鳴らす音だけが響いていて恥ずかしい。

何口か飲んでからペットボトルの蓋を閉めると、あたし達のあいだに微妙な沈黙が流れた。

ベッド脇に置いたパイプ椅子に腰かけたあっくんは、ずっと黙ったままで何を考えているのかわからない。


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