ボーダーライン。Neo【上】
 ーー美波か。確かに、美波と二人でなら、行きやすいかも。

「うん。そうね、分かった! じゃあ美波にも都合聞いとく。あの子好奇心強いから、秋月くんが歌うって言ったら絶対行きたいって言いそう」

『ハハっ。あの人面白ぇよな? 俺の事アンニュイとか言うんだぜ? そんなの初めて言われたし』

「そー、なんだ?」

 ーーアンニュイ? 後で調べなきゃ。

『うん。美波さんは黙ってりゃ美人なのにな~。ギャップ有りすぎ』

 ーー美人。

 不意にあたしは真顔になった。まただ。胸のあたりがモヤモヤする。

 ーー確かに美波はあたしと違って美人だけど。……ってか。なんか、あたしの知らないところで随分と打ち解けてるよね。

 この感情が最近度々と起こる、嫉妬だというのは分かっていた。

 あたしは黙り込み、無意識にむくれていた。すると、その空気が伝わったのか、秋月くんが慌てて言った。

『あ、いや。別に悪口とかじゃ無いんだけど。先生?』

「……あ、ごめん。美波と仲良いんだなって、思って」

『さぁ? 別にフツーだけど。何で?』

 ーー何でって。そんなの、言えるわけないよ。

「や、ううん。何でも無いの。そーよね、ごめんね、変な事言って」

 年下の男の子に気を遣わせている事が、急に恥ずかしくなった。
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