ボーダーライン。Neo【上】
無言で眉をひそめた。正直あまり気は進まない。
しかし目の前の記者が、五分、いや一分だけでも良いんです、と食い下がるので、了承する事にした。
「僕は別に構いませんが。一応マネージャーの竹原に確認して貰っても良いですか?」
言いながら小さく笑い、近くでカメラマンの男と話をする竹ちゃんに、スッと目を向けた。
彼女はありがとうございます、と一礼し、竹ちゃんの元へ同じ説明をしに行く。
僕と同様に若干難色を示す竹ちゃんだが、本人は良いと言っていて、という言葉に、それならとこちらへ視線を投げた。
「五分だからな?」
そう念押しされ、はい、と返事をする。
廊下に出て程なく歩いた所で、その女性社員と出くわした。
顔を見て、ああなるほど、と息をつく。
二葉 美波です、と丁寧に名刺を渡された。
「うちの二葉はHinokiさんと知り合いだと言ってるんですが、本当ですか?」
女性記者が疑いの眼差しで訊ねた。
「はい、まぁ」
僕は彼女に視線を送り、ご無沙汰しています、と軽く会釈する。
「ええ。久しぶりね? 檜くん」
記者は幾らか面食らっていたが、知り合いなら、とその場を離れた。