ボーダーライン。Neo【上】
「あたしに犯罪の片棒担げって言うの?」

「いやいや。犯罪って、ンな大袈裟な!」

「秋月くん、あたしが終了式に言った事。全然聞いてなかったでしょ?」

 そこでハテ、と彼が首を傾げた。

「‘夏休みでバイトを始める生徒が稀にいますが絶対やらない様に。特に、夜のバイトは厳禁です’」

「え?」

「ほら、やっぱり聞いてない」

 どうしてだろう。胸の内がモヤモヤする。
 
 ーー何であたし。こんな、面白くない気分なんだろう。

「ご、ごめん」

「それにここ。あたしの行き着けなの」

 言いながら、あたしはETOILEの看板へ目を向けた。黒く薄い鉄板に、飾り文字で彫ってある。

「じゃ、じゃあさ。こういうのはどう?」

「はい?」

 秋月くんお得意の、交換条件が飛び出すぞ、と内なるあたしが告げた。

「先生の飲み代、今日は俺が立て替える」

 ふっと頬を緩め、思わず笑みを漏らした。

「立て替えるって! あたしお金持ってるし」

「え? あれ?? 奢るって、意味……」

「秋月くん、そんなのばっか」

「え」

 ーー何なの、この子。見た目に反して凄くかわいいし、面白いかも。

 あたしはひとしきり笑った後、彼を見上げて言った。
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