ボーダーライン。Neo【上】
「あんた一端の口訊くわね~。ま、いいわ」

 美波は、次なる標的をカイくんと決めたようだ。

「カイくん、イギリスへは二人だけで行くの?」

「はい、そうですよ?」

「へぇ。何泊するの??」

「決めてないですけど。……二、三泊?」

 言いながらカイくんは秋月くんに目配せした。

「で済むかな? 俺らじーちゃんばぁちゃんに溺愛されてっから」

「言えてる」

 美波は目の前の二人を見比べ、首を傾げた。

「お祖父ちゃん?」

「イギリスは二人の生まれ故郷らしいですよ?」

 会計を終えたマスターが、再び話に参加する。

「え?! そうなの?? サチ、知ってた?」

 一応は、とあたしはまだグラスを持ったまま頷いた。

「じゃあガイドとか、いらない訳だ?」

 ーーそうだよね。二人にとっては田舎に帰るようなものだもの。

「そりゃあ、まぁ」

 しれっと言ってのける彼を見て、美波の目が光るのを感じた。我に策あり、とでも言いたげだ。

「それ。あたし達も一緒に行ってい?」

「一緒……って。えぇッ?!」

 秋月くんが珍しく取り乱す。美波を見てから、あたしにも目を向ける。

 彼の茶色の瞳が綺麗で、少しの間見惚れてしまう。
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