キミの世界で一番嫌いな人。
どうしよう、動けない……。
背中がじんじんと痛い。
取り囲む男たちは私に影を作ってはゲラゲラ笑っていて。
はやく校長室に行かなきゃなのに…。
「うおっ、こいつ2万も入ってるぜ?」
「ラッキー。こいつは使えそうだな」
バッグをガサゴソと漁られて、地面に落とされて。
財布の中身はぜんぶ奪われたっぽい。
やめて、と言ったところで喧嘩になれば確実に勝てないから。
でもこんなところでへこたれてるわけにもいかなくて。
……あの人に会うまでは。
「退け、邪魔だ」
───そんなときだった。
目の前から聞こえた低い声、うずくまる私のすぐ前に立ったひとり。
おそるおそる顔を上げてみる。
マスクをしていたから目しか見えなかったが、それだけでもかなりの美形なのだとわかった。
「おい、邪魔だっつってんだろ」
睫毛は長いし、目はパッチリ二重。
彫刻のように通った鼻筋。
少し明るめの栗色をした髪は無造作に揺れていて。
「───…」
興味なさげな視線から目が離せなかった。