キミの世界で一番嫌いな人。




「あ、あんたは…!!」


「おいやべぇ逃げるぞ!!」



バタバタと足音は去って行くと、すぐに静かになった校門。

助けてくれた男は一瞬私を見つめてから、そのまま逸らしてスタスタと校舎へ行ってしまった。



「あっ、あの!!ありがとうございました…!!」



なんて頭を下げたところで、振り向かず歩いて行ってしまう。


ヒーローだ、まるで正義のヒーロー。

言葉は少なくとも行動で表せちゃうような。



「あっちゃ~…やっぱり2万盗られてる…」



落ちた財布の中身は小銭の120円のみ。


その財布だって、男になるために買い換えたものだ。

すべての私物は黒や紺色で統一して。



「今日のお昼は購買で買おうと思ってたのに……」



120円て……。

小学生のお小遣いでもこれはないよ。



「小鳥遊 青葉です。…よろしくどうぞ」



誰も聞いてない。

黒板に書かれた“小鳥遊”という漢字を前にして、「ことり…ゆう…?」なんて首を傾げるレベルが聞いている生徒だった。


2-B。

今日から私はここのクラスメイトらしい。



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