キミの世界で一番嫌いな人。




いちばん言ってはいけない気持ちだった。

電話の先はすごく静かで。
それでも、これでもう最後なら尚更と。

ここで私はぜんぶ話して、あなたの前から消える。


もう屋上にはいけない。

先輩って、呼べない。



『…ばぁか、ありえねぇよ。それはいちばん駄目だ』



うん、知ってます。
だから言っちゃったの。

私があなたの後輩の男だから、言えた。

だってほら、少し笑ってくれてるもん。
冗談にしてくれてる。


たぶん女として言ってたならば、『ふざけんな俺は大嫌いだ』って言われてしまうから。



「…先輩…、俺も、先輩のこと……好きです」


『やめろ気持ちわりぃ』


「はははっ、…いいじゃないですか、」



卒業まで、先輩が卒業するまでに、たくさん楽しい毎日を送って欲しかった。

笑ったり怒ったり、それを隣で見るだけで良かった。



「身体…気をつけてください、最近寒くなってきたから…」


『…お前もな』


「俺は…わりと丈夫なんです。だから、大丈夫です」


『……つーか、なんだこの会話。高校生がする話じゃねぇだろ』


「あはは…っ、確かにそうですね、」



まだこれから冬休みとかあるし、先輩は進路だってある。

傍で「頑張って先輩っ」って言うくらい、それくらいでいいから。


……したかった。



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