キミの世界で一番嫌いな人。




俺たちはやっぱり会ってはいけなかった。

俺だってあのときから、お前に会うことをやめておけば良かったんだ。


あのとき───…?

いつだ?祭りのときか?……いや、ちがう。


最初、校門でお前の顔を見たときだ。



「なんで…っ、なんでお前なんだよ…、」



なんでお前があいつの娘なんだよ。

最初からわかってはいたが、それでもお前を見てたら少しだけ。


あの男を許せるような気がした。



「金輪際、俺の前に現れんな。…もう顔も見たくない」



大嫌いだ。

お前のことなんか、ずっとずっと昔から大嫌いだ。



「もう……、俺に関わるな」



たとえあの男がお前の後ろにいたとしても。

それでもいつからか、俺はお前のことがいつも脳裏に浮かんでいて。

いつも泣かせて辛い顔ばかりさせてたから。


でもさっき、お前の部屋で初めてあんな笑顔を見せてくれて。

その姿が昔、病院で見たものと変わっていなくて。



「それでも私は先輩のことが…っ!」


「それ以上言って男のお前との思い出まで汚すんじゃねぇよ。
俺はお前なんか───…大嫌いだ」



俺を掴んでいた手はスルッと離れた。


どしゃ降りのなか、髪の短いそいつはワンピースを着ていて。

女だったんだな、やっぱり。



本当は最初から、薄々、気づいてた。








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