キミの世界で一番嫌いな人。
それがよく知るものに似ていたから。
すっと、顔を上げてみる。
「うっわ、ボロボロじゃんお前」
なんでいるの?なんでここがわかったの?
冬休みなのに今。
雨の音が少しだけこもった。
それは、その人が私に傘を差してくれてるからで。
「ここまで豪快な鳥の行水するのなんかお前くらいだよね、チビ」
あぁ、今は妹ちゃん?なんて言って、覗き込んでくる。
やっぱりお洒落だなあ。
こんな雨の日でもそこまで着こなすファッションセンスしてる人なんか、1人くらいしか知らないよ。
「妹ちゃん髪切ったの?兄貴と同じ?あんたら兄妹はほんっと面白いや」
「……今は……、合体しました…」
「…へえ。ショートもなかなか似合ってると思うよ、俺は」
もう傘差しても意味ないのに。
だってとっくに濡れてる。
それじゃあアッキーが濡れちゃうよ。
というかアッキーこそ、どうしてこんな雷雨のなか外にいるの?
少し息切れしているようにも見えた。
「藤城サンと何かあった?あの人もどしゃ降りのなか傘すら差さずボロボロだったからさ。…こんなことだろうと思った」