キミの世界で一番嫌いな人。




優しいんだか優しくないんだか分からない。

前もそうだ。

褒めてるのか褒めてないのか分からなくて、アッキーって最初からそういう人だった。



「それと、大事にしないと殺すって言わなかったっけ?」


「……え。」



……あ。


ワンピース、雨でびしょ濡れだ。

冷や汗なのか雨なのか分からないものが、こめかみに垂れた。


身体が離されると、いつものアッキーが目の前。



「だ、大事にしてるよっ!俺いつも女の子になるときはこれ必ず着てるし…!」


「…まぁ、それは嬉しいけど」


「着やすくて気に入ってるんだよ俺っ!」



するとアッキーは私の顎をスムーズに掴んだかと思えば、そのままクイッと引き上げた。



「“俺”じゃないだろ?」



あ……、私、か…。


そっか、もう隠す必要がない。

でもアッキーは男友達だから自然と“俺”って癖がついちゃって。



「わ、わた…し、」



こんな雨の中でもいつも通りに似た会話を交える私たち。

だけどふっと笑ったアッキーの顔は、そのまま近づいた。



「───んっ…!?」



本日2人目のキスは、まさかのこの人。


ファーストキスも今日。

それなのに違う人に同じことをされている。



「ん…っ、あっき…っ!」


「…なんだ、甘い声出せるんじゃん」



< 219 / 317 >

この作品をシェア

pagetop