キミの世界で一番嫌いな人。
「ようよう姉ちゃん、ひとり?」
「俺たちと遊ばない?浴衣かわいいね」
背中からかかった声に振り向けば、無意識にも全身が震えた。
なん…で…。
「…す、すみません、もう帰るので」
「そんなつれないこと言うなよぉ、俺たちと楽しいことしない?」
それはいつぞやかの男たちだった。
先輩を前に一瞬にして逃げて行った柄の悪いチンピラ。
あのとき私は地面に叩き付けられて、すごく怖かったのを覚えてる。
いまも震えてる……。
「2でどーお?3でもいいぜ?」
「でも可愛いから4出しちゃおっかなぁ~?」
耳元でこそっと囁かれて背筋が凍った。
あのときはお金ないって言ってたのに、なにを言ってるのこいつら。
この場所はもう屋台から外れてる。
みんなそっちに集まっているからか、住宅街は妙に静かだった。
「お、親が迎えに来るので…」
「はははっ、嘘ってバレバレだっつーの」
「震えてんじゃねーか。俺たちが怖いの?かっわいいねえ」
腕を掴まれてしまえば声すら出ない。
少し汗ばんでる手が怖くて気持ちが悪くて。
あのときは先輩がいたから助かっただけで。
私は女だ、男じゃない。