キミの世界で一番嫌いな人。




力だってどうしたって敵わない。

どうしよう、誰か助けて───…、



「はっ、離してください…っ!」



自分的には大声を出した気でいるとしても。

ニヤニヤと笑っている男を見れば、そこまで大きく出なかったらしい。


誰か───…!



「相変わらず懲りねぇな、おまえら」



すぐに腕の力は離れた。


ガッ…!!

と思えば、男たちは地面に倒れてゆく。



「おい君たち!なにをしてるんだ!!」



うそ、警察!?

待ってこれじゃあ私たちが悪い人みたいになってる…?



「チッ…走るぞ!!」



ぐいっと手が引かれた。


暗闇でもわかる栗色の髪、マスクは今日はしてないみたい。

黒のスキニーパンツに薄手のロングカーディガン。


アッキーと違ってネックレスは付いていないけど、Vネックから覗いた鎖骨と首筋に目を惹かれて。

左耳のピアスがキラッと光った。



「はっ…!はぁ……っ、」


「だ、大丈夫ですか…!?とりあえず休みましょう…っ」


「…悪い」



どうにか追っ手は撒いて明るい場所へ辿り着いたはいいものの、先輩は胸を押さえながら呼吸を繰り返した。

走らせてしまった。
それを一番させたくなかったのに…。


立ち止まった場所は、一緒にサッカーをした公園。

とりあえずベンチに座らせて、私は自動販売機に走った。



< 74 / 317 >

この作品をシェア

pagetop