キミの世界で一番嫌いな人。
力だってどうしたって敵わない。
どうしよう、誰か助けて───…、
「はっ、離してください…っ!」
自分的には大声を出した気でいるとしても。
ニヤニヤと笑っている男を見れば、そこまで大きく出なかったらしい。
誰か───…!
「相変わらず懲りねぇな、おまえら」
すぐに腕の力は離れた。
ガッ…!!
と思えば、男たちは地面に倒れてゆく。
「おい君たち!なにをしてるんだ!!」
うそ、警察!?
待ってこれじゃあ私たちが悪い人みたいになってる…?
「チッ…走るぞ!!」
ぐいっと手が引かれた。
暗闇でもわかる栗色の髪、マスクは今日はしてないみたい。
黒のスキニーパンツに薄手のロングカーディガン。
アッキーと違ってネックレスは付いていないけど、Vネックから覗いた鎖骨と首筋に目を惹かれて。
左耳のピアスがキラッと光った。
「はっ…!はぁ……っ、」
「だ、大丈夫ですか…!?とりあえず休みましょう…っ」
「…悪い」
どうにか追っ手は撒いて明るい場所へ辿り着いたはいいものの、先輩は胸を押さえながら呼吸を繰り返した。
走らせてしまった。
それを一番させたくなかったのに…。
立ち止まった場所は、一緒にサッカーをした公園。
とりあえずベンチに座らせて、私は自動販売機に走った。