キミの世界で一番嫌いな人。
「俺は金で売られたんだよ。てめぇの父親が差し出してきた金に、…俺の心臓は買われたんだ」
謝れないと思った。
謝るなんて、そんな軽い言葉すら使ってはいけない。
それがこの人を何よりも傷つける。
いちばんは、やっぱり私がこの人の前に現れないことだ。
「…お前の名前を教えろ」
「……できないです、」
「そうか、なら金輪際俺の前に現れんな」
最初と同じ言葉だ。
それがどこか嬉しく感じてしまった自分が、この上なく大嫌い。
「わ、わかりました。…でも…ひとつだけ、」
首元に当てられた力が少しだけ緩まった。
なんだ、と目線が答えてくる。
泣いちゃだめだ。
私が泣くなんておかしい。
「兄は…あなたのことが大好きなんです…。私のことが赦せなくても、兄とは今まで通り仲良くしてあげてください……、お願いします」
「…あいつはお前のことはあまり知らねぇらしいが」
「…はい。兄とはあまり会ってはいないので…。でも兄は、あなたに出会って変わったんです」
もうぐっちゃぐちゃ、矛盾だらけ。
自分でも何を言ってるか半分以上わかってない。
本当に私ってズルい。