AIが決めた恋
体育館へ行くと、そこには既に1人だけ人がいた。僕達に背を向けている“彼”は、(はかま)を着て、棒状のものを持っている。

「あれ?体育館を使う部活は、今日は朝練が無かったはずだか。誰だ?」

先生がその生徒に声をかけ、“彼”が振り返る。

「真島か。」

その名前にドキリとした。
きっと、昨日、真島くんに関する色々な噂を聞いてしまったからだ。

「何だ?その格好は。」
「剣道の練習です。今日は格技場が使えなかったので、先生に頼んで体育館で練習させていただいています。」

彼が深くお辞儀をした。
格好良い。素直にそう思った。袴を着ているからだろうか。それとも、単純にルックスが良いのか…。どちらにしても、その格好良さを、僕は持っていない。

「そうか、丁度良かった。真島も一緒に体育館倉庫の整理をしてくれないか?」
「体育館倉庫の整理ですか?」
「ああ。佐倉もやってくれるんだが、1人では大変だろうから。」
「分かりました。」
「本当か!?」
「はい。スポーツをする者なら、準備や片付け、備品の整理まできちんとやるべきですから。」

真島くんは表情を少しも変えず、クールにそう言った。
ここでも僕との違いを見せつけられた。僕は何の意思も無く、先生に言われたから手伝っているだけだが、真島くんは自分の意思で手伝うことにしたのだ。

「真島は人間ができてるな。ありがとう。じゃあ、そういうことで、先生はHRを行ってくるから、よろしく。」
「はい。」
「2限に体育館を使うクラスがあるから、鍵は開けたままにしておく。君達も終わった後、開けたまま戻って来てくれ。」
「分かりました。」

そう言うと、先生は教室へと戻っていった。
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