新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「今日はちゃんと髪を結んでいるんだな」

 はっきりとした日本語を話す声が聞こえて、その方向を見ると、先日牧場にいた男性が立っていた。

「あなたは! この前の!」

 牧場で私のことを髪がぼさぼさでひどいありさまだなと言った男だった。

 今日の彼は、微かに色がわかるくらいの水色のワイシャツにグレーのスラックス。ワイシャツは袖を肘のあたりまでまくって、リラックスした姿だ。

 目の肥えていない私でさえ、体にフィットしているそれは上質な生地と縫製なのだろうとわかる。

「疲れただろう。座って」

 彼は染みひとつないソファを示す。

「疲れてないです。早く雪丸に会わせてください。そうだ! 書類ですね!」

 私はリビングの入口に置かれたキャリーケースまで行き、倒すとその場でロックを解除して開いた。

 真ん中の仕切りの小物入れから分厚い書類を取り出し、キャリーケースを開いたまま立ち上がり振り返る。

 離れたところにいると思っていた彼は、いつの間にか私のうしろに来ていた。

「はい! どうぞ書類です! 早く雪丸に会わせてください」
「雪丸? さっきから雪丸と言っているが、スノーラウンドだろう?」
 
 私から書類を押しつけられた彼は眉根を寄せる。

「私にとっては、彼はずっと雪丸です」

 きっぱり言いきる私に彼は鼻で笑った。

「書類を確認する。とりあえず座って」

 ソファの方へ歩を進める彼に、今は従うしかようだ。雪丸の居場所がわからない以上動けない。

 彼はひとり用のソファに腰を下ろし、脚を組むと書類を見始める。

 この人は馬主じゃないよね? 弁護士?

 そこへ、年配の金髪女性が飲み物と軽食がのったトレイを持って姿を見せた。

 白いエプロンをつけているからお手伝いさん?

 私が座っていないのを見て、女性は戸惑っているみたいに見受けられる。

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