新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 斜めに座る彼の視線をふと感じて顔を向けた瞬間、目と目がバチッと合う。

「もういいですか? 雪丸に会わせてください。体調が心配なんです。それと馬主さんにはいつ会えます?」

 彼は一瞬目を丸くした。

「馬主は俺だ」
「ええっ!? あなたが馬主の結城さん?」
「そうだ。俺が馬主でおかしいか? いったい誰だと思って書類を渡したんだ?」
「馬主には見えないから、代理人なのかと……」

 驚きすぎて言葉尻が小さくなっていく。

「俺は結城瑛斗(あきと)。スノーラウンドの馬主は世界中に手広く事業を展開しているから安心しろ」
「世界中に……手広く……はぁ……」

 そう言われてもピンとこなくて、間の抜けた返事になる。

「あなたが馬主なら、早く雪丸に会わせてください」

 今一番大事なことは雪丸に会うことだ。

「君の頭にはスノーラウンドしかないのか?」
「だってそのために来たんですから」

 私はソファからすっくと立った。そうすれば結城さんを急かせられると思って。

 すると結城さんは書類をファイルにしまい、無造作にローテーブルの上にそれを放ると優雅に立ち上がり私の前に来る。

 結城さんは身長百六十五センチの私が仰ぎ見るほどの長身だった。

 牧場で会ったときはスーツ姿だったからわからなかったけれど、ワイシャツ姿の彼は無駄な贅肉がいっさいない鍛えられた体躯の持ち主のようだ。

 それに加え、端整な顔立ち、優雅な所作。

 田舎育ちの私が今後二度と会わないような、遠い存在の人だ。アニメのキャラのように二次元のような感覚だった。

「行くぞ。荷物はそのままでいい」
「えっ? 私は牧場に泊まれればいいんですが」
「牧場に?」

 結城さんは驚いたような瞳を向ける。

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