新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「座ろう。レナ、食事は?」

 瑛斗さんは私たちに着席するよう告げてから、隣に腰を下ろしたレナさんに尋ねる。

「食事は済ませたわ。でも喉が渇いたからシャンパーニュをいただけるかしら?」
「もちろん」

 瑛斗さんはシルバーのワインクーラーから瓶を手にして、コレットさんが持ってきたグラスに注ぐ。

 コレットさんは突然のお客さまの対応に慣れているのだろう。すぐに用意をする機敏さがある。

 レナさんは頻繁にここへ来ているのかも。あ、もしかして彼女は瑛斗さんの恋人……? でも友人を紹介するって言っていたっけ……。

 レナさんはグラスを手にして、瑛斗さんに少し掲げてみせてから口にする。

 その流れるような動作は指先まで美しいと思えた。

 私にあんな仕草を求めているのなら無理だ。牧場には必要ないし、そもそも私にできる気がしない。ああいった所作は育った環境というものがあってこそじゃないかな。

 レナさんは「いつもながら、瑛斗が選ぶシャンパーニュはおいしいわ」と口にしてにっこり笑みを浮かべる。

「紅里? 食べて。まだ残っている」

 瑛斗さんの声にハッとしてお皿へ視線を向けると、まだ半分ほど肉が残っていた。

「はい」

 目の前のふたりが話をしているうちに、綺麗に平らげた。

 デザートはレナさんの分も用意され、美しいお皿に三種類のケーキやムースなどが盛りつけられている。

 甘いものに目がない私は瞳を輝かせ、さっそく食べ始めた。

「教えがいがありそうね。実際に彼女のような女性がいるなんて驚いたわ」

 レナさんはひと口ずつデザートを口にした以外はシャンパーニュを飲んでいる。

 彼女の口ぶりは、私をばかにしているように聞こえた。

「毎日馬の世話をしてばかりで、必要がなかったからな。それも仕方ないだろう」
「ええ。だから私が頼まれたのよね。責任持って、彼女を女性らしくしてみせるわ」

 レナさんは微笑を浮かべて、膝に置かれたナプキンでそっと口もとを拭き、またシャンパーニュを口にする。

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