新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 私はふたりのやり取りを聞き流しながら、デザートを綺麗に食べ終える。

「今日はこれから牧場へ行くから、レッスンは明日からで」
「まあ! 牧場に? 私も行きたいわ」

 レナさんは瑛斗さんに甘えた視線を向ける。

「行ってもつまらないと思うが、君が行きたければいいよ」
「つまらなくなんてないわっ」

 どうやらレナさんも一緒に行くことが決まったようだ。

 やっぱりふたりは恋人同士? まあ私にはどうでもいい。雪丸、元気になったかな。ちゃんと食べているといいんだけど。

 そのときふと、レナさんがひと口ずつ食べただけの、いっこうに手をつけないデザートのお皿が目に入った。

「レナさん、もう食べないんですか?」

 私は思わず聞いてみた。

「ええ。おなかがいっぱいでこれ以上は入らないの」
「じゃあ、私が食べてもいいですか?」

 そう言った途端、瑛斗さんとレナさんは呆気に取られた顔になった。

「まだおなかが空いているのか? 用意させるが?」

 瑛斗さんが尋ねてくる。

「空いているわけじゃないですけど、食べ物を粗末にしてはいけないと言われてきたので。レナさん、いいですか?」
「え、ええ。私のでよかったら……」

 私は中腰になってレナさんのデザートのお皿をもらい、食べ始める。おいしいティラミスを口にしながら、ふたりの視線を感じていた。

 おかしな子だと考えているのだろう。マナーに反しているかもしれないが、作ってくれた人に対しての礼儀だと思うから別に気にならなかった。

 食後、バルトさんの運転で牧場へと向かった。

 後部座席に三人座れるところを、私はあえて助手席に座る。レナさんの瑛斗さんへの恋心はほんの少し一緒にいただけでわかり、お邪魔虫になるつもりはなかったから。

 ふたりの会話は日本語からフランス語に切り替わっていた。なにを話しているのかまったくわからなくて、思わず苦笑いを浮かべる。

 早く雪丸に会いたいな。

 気づけば車は牧場の敷地を走っていた。


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