新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「昨日の怪我をした馬は?」
「ひどいことにはならずに済みそうだ。ただ……競走馬としては引退するしかないな」

 その言葉にホッと安堵したと同時に、同情を覚える。

「……そうですよね。少しの怪我でも競走馬にとっては命取りですから」
「君はあの馬の今後が心配なんだろう?」

 私の表情から気持ちをくみ取ったらしい瑛斗さんは、やんわり笑みを浮かべる。

「はい。まさかってことはないですよね?」
「ああ。これからもこの牧場でしっかり面倒を見る」
「よかった……早く怪我が治って、自由に動けるようになるといいですね」

 競走馬として走れなくなった馬は殺処分されるケースが多い。高額の維持費がかかるからだ。
 瑛斗さんは牧場も経営しているから、そこのところはクリアできるのだろう。

「ここを案内する。ついてきて」
「えっ? あ、レナさんは? 放っておいていいんですか?」
「子どもじゃないんだから、大丈夫だろう」

 瑛斗さんはサラッと言ってのける。

 恋人同士だったら、彼女を放っておかないよね。やっぱり単なる友人なのかもしれない。レナさんの瑛斗さんへの好意は、すぐにわかったけど。

 瑛斗さんは森に続く道へと黒馬を進ませ、私も急いで雪丸を誘導した。

 雪丸に騎乗している私はキョロキョロ辺りへ視線を向けながら、この開放感を楽しんでいた。

 瑛斗さんの乗馬はとても安定していて、馬をしっかり制御できている。

 こんなにスマートにかっこよく馬を乗りこなしている人は、今まで私の周りにはいなかった。

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