新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 粗野な牧場の男たちとは違う、映画の一コマを観るような目で、先を行く瑛斗さんのうしろ姿を見ていた。


 たっぷり一時間かけて森を案内してもらい、厩舎へ戻ってきた。
 
 雪丸と一緒で幸せだった。だからというか、時間も、待っているレナさんのこともすっかり頭から抜けていた。
 
 彼女を思い出したのは、厩舎の入口のベンチに座っているレナさんの姿が目に入ってからだ。スマホを手に退屈そうな表情を浮かべている。
 
 でもレナさんは瑛斗さんに気づくとすぐにすっくと立って優雅に手を振り、柵の出入口に近づいてきた。

「おかえりなさい」
「待たせてすまない」

 瑛斗さんは黒馬からひらりと身軽に飛び下り、私も雪丸の首のあたりを優しく叩いてから地面に足をつけた。

「雪丸、ありがとうね」

 彼の頬のあたりに顔を近づける。

 私が離れると、雪丸と黒馬は牧場の男性によって厩舎へと連れられていく。

「レナさん、お待たせしてすみませんでした」
「いいのよ。楽しかったかしら?」
「はいっ、とても」

 私はレナさんに満面の笑みを向けた。そこで瑛斗さんの手が私の髪へと伸びてくる。

「葉っぱがついている」

 そう言って、瑛斗さんは私の髪についていた葉を取ってくれた。

 髪に癖があるせいで、いつの間にか葉っぱや散った花びら、藁なんかもよく絡んでしまうのだ。

「ありがとうございます」
「どういたしまして」
 
 瑛斗さんが端整な顔に微笑を浮かべたとき、彼の腕をレナさんが掴んだ。

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