新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「瑛斗、喉が渇いたわ。街へ戻ってなにか飲みましょうよ」
「そうしようか。紅里、手を洗いにいこう。レナ、少し待っていてくれないか」

 瑛斗さんは私を手洗いの場所へ案内してくれる。

 厩舎の側面へ回ると、レンガ造りの水飲み場があった。

 私は手を洗ってから、顔にも水をバシャバシャかけた。

 さっぱりして、ポケットからハンカチを取り出して顔と手を拭く。そこで視線を感じ、見ると瑛斗さんがポカンと口を開けて私を注視していた。

「な、なにか変ですか?」

 顔に汚れでもついているのだろうかと困惑する。

「いや……」
「あ! ハンカチですね! かなり濡れちゃっていますが」

 裏地がタオル仕様のハンカチを瑛斗さんに差し出す。すると、瑛斗さんはこらえきれなくなったのか爆笑し始める。

「なにがおかしいんですか……?」

 瑛斗さんの苦しそうな笑いに、私はただキョトンとするばかり。

「い、いや、失礼……クッ、君みたいな女性を、見たことがなかったから、ククッ」

 瑛斗さんを笑いのツボにはめてしまった理由がまだわからない。

 彼はようやく笑うのをやめ、はぁーと息をこぼしてから口を開く。

「そこで顔を洗う女性は初めてだ。クッ……だが、女性らしい所作とは言えないから、今後は濡れたハンカチで拭く程度にした方がいい」
「そんな面倒な……」

 やってられないとばかりに口を尖らせるが、瑛斗さんは唇を引き結び、首を左右に振る。

「行こう。君も喉が渇いただろう」
「私は大丈夫です。今、そこの水を……飲ん……で……」

 ギョッとしている瑛斗さんに気づいて言葉が尻すぼみになった。

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