新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 早く座りたい。本当にこれで歩けるのか……。

「じゃあ、次を履いて」
「レナさん、本当に自信がないので、この一足だけにしてください」
 
 実用性のないものはもったいないなと思う。
 
 私が断固として口を引きしめて意思を告げると、彼女は仕方ないわねと言うように重いため息をついて渋々うなずいてくれた。


 助手席に乗り、後部座席に並ぶショッパーバッグへと視線を向けてどんよりとした気分になる。
 
 こんな買い物は本当にお金の無駄使いだ。

「もうこんな時間っ!」

 運転席に座るレナさんは華奢な腕時計を確認して声をあげる。現在の時刻は十六時を回っていた。十一時にレナさんが迎えにきてから、ランチも取らずすでにこんな時間になっていたのはわかっていた。

 私のおなかは盛大に食べ物を欲している。

「本当にショッピングは時間が経つのも忘れちゃうわ」

 車を発進させながら、レナさんは独り言ちる。

 レナさんは、買い物以外では私的な会話はいっさいしない。都会的で洗練された彼女と、田舎娘丸出しの私とでは共通の話題を見つけるのも大変だから、それは仕方がないが。

 瑛斗さんのアパルトマンの車寄せに停め、ドアマンがたくさんの荷物を引き取る。

 それが不思議で私はレナさんに話しかけた。

「あの、荷物は?」
「部屋に運んでくれるから気にしないで。行きましょう。瑛斗が戻っているそうよ」

 レナさんはうれしそうに満面の笑みを浮かべる。

 彼女の瑛斗さんへの好意はあからさまだった。


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