新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「紅里、夕食だ」
「は、はい! 手を洗っていくので、先に食べていてください!」

 ドアに向かって大きな声で告げる。

 まだ羞恥心にかられており、出ていけない。

「わかった。テラスにおいで」

 そう言って瑛斗さんは戻っていったようだ。

 はぁ~と息を吐き、洗面台の前に立ち、金色の蛇口をひねる。勢いよく流れる水へ手を差し入れながら、アンティークな鏡に映る自分を見つめた。

 やだ、まだ顔が赤い……。

 大きく首を左右に振り、手を洗い終えると次に水を顔にバシャバシャかける。

 冷たい水がひんやりと頬にあたって気持ちよかったが、ふかふかのタオルで拭き終えた顔は余計に赤く染まっていた。

「もうっ!」

 あまり遅いのも、動揺しているのがバレバレだ。

 私は気合を入れるように「よし!」と両手でガッツポーズをしてから部屋を出た。


 テラスは、テーブルに置かれたいくつかのロウソクとリビングからの明かりしかないので薄暗く、顔色がわからなそうで安堵する。

 先ほどまでいたレナさんの姿がない。カトラリーのセットも二組だ。

 瑛斗さんもいなくて、どうしたのだろうと振り返ったとき、赤ワインの瓶を手にしてこちらに歩を進めてくる彼がいた。

「今日はカツレツだから、合いそうな赤ワインを探してきた」

 瑛斗さんは私の横を通り過ぎ、テラスに用意されたテーブルの上に赤ワインの瓶を置いて椅子を引く。

「紅里? 座って」

 瑛斗さんの流れるような一連の動作に見とれてしまい、ばかみたいに突っ立ってしまっていた。

「は、はい」

 我に返った私は瑛斗さんの対面へ向かう。

「そっちじゃなくて、ここへ。クッ……」

 彼はおかしそうに顔を緩める。

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