新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「えっ?」

 椅子の背に手を置いたところで、瑛斗さんの方へ視線を向ける。

「君のために椅子を引いているんだから、座ればいいんだよ」

 き、君のため!

 きざなセリフに驚くが、瑛斗さんならそんな言葉も自然でおかしくない。しかし、私にとっては聞きなれないセリフ。

 めちゃくちゃ恥ずかしくて、ぎこちない歩みで瑛斗さんの引いた椅子の前へ行った。

「ホテルや高級レストランではボーイなどにこうされることも多い」
「そ、そうなんですか……?」

 日本で椅子を引かれたことなんて一度もない。そういえば、到着した翌日も瑛斗さんが椅子を引いてくれたのを思い出す。あまりに自然で、そのまま座っちゃったけど。

「ああ。静かに腰を下ろして」

 私は言われるままに足を曲げる。椅子が前に動かされるが、私は違和感なく座れた。

 瑛斗さんの手が椅子の背から離れる。彼は対面の椅子に腰を下ろすと、赤ワインの瓶をオープナーでごく慣れた動作で開け始めた。

 コルク栓を抜き終えた彼は、ふたつのワイングラスに注いでいく。

 そこへコレットさんが料理を運んできて、テーブルに並べてくれる。

「食べよう」
「いただきます」

 失敗しないように気をつけながら、布ナプキンを半分に折って膝の上に置く。

「おいしそう! コレットさん、いただきます」

 まだそばにいたコレットさんにも英語で声をかけてから、ナイフとフォークを手にした。

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