新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 言葉が通じないせいか、金髪の男性は無言で助手とともに作業していく。渡されたファッション雑誌を見ても興味が湧かず、しだいに眠くなってきた。

 ここへ来てから連日、慣れないことばかりしているせいで疲れているのだろう。

 あくびが出て、しだいに瞼が閉じていくのを止められない。

 うつらうつらとしているうちに椅子が倒されるも、薄目を開けただけで眠りに落ち、ヘアドライヤーの温かさと音でハッと目が覚めた。

 まず鏡に映る金髪の男性と助手の女性が目に入る。ふたりはそれぞれヘアドライヤーを持ち、私の髪に温風をあてているが、視線を鏡の中の自分に向けたとき「えっ?」と声が漏れた。

 癖の強かった髪が、やわらかくふんわりと肩に落ちていた。

 今まで見慣れた自分ではなく、誰?と聞いてしまいそうなレベルだ。

「どうでしょう? 美しくなりましたね」

 金髪の男性はびっくりして目を見開いている私に英語で話しかけてきた。

 なんだ。英語も話せたのね。

「み、見慣れなくて……」

 色は変わっていないが、髪が真っすぐに伸びている。長さは今までと同じように見えるけれど、揃えるために五センチほど切ったと彼に言われた。

 施術用のケープが取られ、どうやら終わったようだ。私は椅子からすっくと立ち上がる。

 腕時計を確認すると、かれこれ二時間半が経っていた。

 そこへレナさんがスマホを耳にあてながら入ってきた。誰かと楽しそうに会話をしているレナさんの視線が私に留まった次の瞬間、彼女は絶句し、食い入るように見つめてくる。スマホは耳にあてられたまま。
 
 我に返った様子の彼女は、電話の相手になにかを告げて電話を切った。

「見違えたわ! 髪形のおかげで少しは洗練されたように見えるわよ」

 この人はいちいち癪に障る言い方をする。でも、事実だから仕方ないと苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、行きましょう。次の予約の時間も迫っているから。その前に軽くランチを取るわよ」

 今日は忘れていないようでホッとしたが、彼女の次の言葉であぜんとする。

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