新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「いちいち瑛斗に告げ口しないでよね」
「す、すみません。告げ口ではなくて、忙しくてと言っただけなので……」
「それも一緒よ。まあいいわ。カフェに入りましょう」

 レナさんは苛立たしげに言って、すぐ近くの、外のテーブルでお客さんがくつろいでいるカフェに入っていく。

 私は気まずいまま後に続き注文して、サンドイッチとアイスコーヒーを流し込むようにして食べる。

 レナさんはどうやらいつもランチは取らないみたいで、グリーンスムージーだけだ。

「それだけでおなかは空かないんですか?」
「ええ。習慣なの。もういいかしら? 時間よ」

 組んでいた脚をほどいて優雅に立ち上がるレナさんに、私は急いで残りのアイスコーヒーを飲んで席を立った。

「次はどこへ?」

 カフェを出て、レナさんに尋ねる。

「ネイルサロンよ」
「ネイルサロンって、爪の?」
「ええ。その野暮ったい手をどうにかしなくてはね」

 野暮ったい手……?

 歩きながら、目の前に手をかざしてみるが、わからなくて首をかしげる。

 たしかに牧場の仕事をしているから、レナさんのように白くてなめらかとはいかないけれど、人それぞれだよね……。


 ネイルに二時間ほどかかり、ぐったりしてひとりアパルトマンへ戻ってきた。私の指先には綺麗な色が塗られている。なんとなく爪が窮屈な感じがしてレナさんに聞くと、すぐに慣れるから心配はいらないと言われた。

 この先ネイルなんてしないだろうから、色の希望を聞かれたときに考えて、ここに来た記念としてモナコの青い海と空の色で指先を飾ってもらった。

 ネイルのおかげで指が綺麗に見えるのは確かだった。

 レナさんはこれから友人のパーティーがあるとかで、彼女もネイルを新しいものにして別れて帰宅したのだ。

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