新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
「お前が雪丸を馬主の結城(ゆうき)さんに送り届けるんだ」

 私は耳を疑った。

「ええっ!? わ、私が付き添うの? おじいちゃん! 本当にいいの!?」

 キッチンに向かうつもりだった私は、ソファに座っているおじいちゃんに近づき、膝をついて確かめる。

「お前が適任だろう。一番雪丸をわかっているからな」
「ありがとう! おじいちゃん!」

 馬主のもとに届けたら完全に雪丸と離れてしまうけれど、それまでは一緒にいられる。そう思うと、元気が復活してきた。

「夕食作ってくる!」

 ドタドタとキッチンへ向かう私に「床が抜けるから静かに歩け」とおじいちゃんが笑いながら注意する声が聞こえた。


 翌日から雪丸の渡仏の準備にかかる。

 札幌で諸々の用事を終えた後、『河原木(かわらぎ)製菓』の店舗で渚が好きなホワイトチョコがけのバウムクーヘンを、デパートではおじいちゃんが好きな銘柄の日本酒を買った。

 渚は高校卒業後、彼女の家が代々手広くやっている農家を手伝っている。朝早くから夕方までの労働は大変で、彼女の口癖は『お金を貯めて早く家を出たい』だった。

「さてと、渚へのお土産も買ったし、帰ろう」

 札幌から自宅までは車で約二時間かかる。

 白の軽自動車に乗り込み、ガソリンが十分入っているか確かめた後、自宅に向かって走らせた。

途中、渚の家に寄る。前もって連絡を入れていたから、十六時過ぎに到着するとすぐに彼女は姿を見せた。

「紅里、どうしたの? 札幌へはなんの用事で?」

 車から降りるなり渚が聞いてくる。私がほとんどの時間を牧場で過ごし、賑やかな札幌の街へは滅多に行かないからだ。

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