御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
『透さんとお話ししてみたいと思ってたんです。お忙しいみたいなので、手紙を書いてきました』

こちらはまだひと言も返事をしてないのに、猪突猛進だな。

自分も御曹司で特異な自覚はあるが、令嬢というのはとくに生活文化が違う。
『ごきげんよう』は都市伝説ではない。このデジタルな時代に、話したいと思ったからと手紙を渡してくる不思議さも彼女らの特性だ。

『……まあ、とりあえず貰うよ。それでいいかな』

彼女の手から封筒を受け取った。しかしそれでは納得せず、たれ目をキリッとさせて覗き込んでくる。

『絶対読んでくださいね! ちゃんと読んでもらわないと、一生懸命書いたのに可哀想じゃないですか!』

それ、書いた本人が言うか?

『わかった、わかった。読むから』

ほとんど圧倒されながら後退りをし、ちょうど青になった横断歩道を渡って彼女から逃げた。
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