日常(仮)
はやとを探す。
探している人たちに見つからないように、はやとを探すのはなかなか大変だった。

はやく済ませないと、こころが起きちゃう。

起きた時に私がそばにいないと、きっとまた泣くだろう。
探してくれていたみんなを無視してまで、私を探すだろう。
それは避けたい。
こころにちゃんと「ありがとう」と伝えさせるんだ。
誰かに探してもらえることの嬉しさをちゃんと知ってもらうんだ。


けど、はやとは見つからなかった。
今回はあきらめて、こころのところに戻ろう。
そう思って、教会に戻ると扉がわずかに開いていた。

こころ、起きた?

そう思って中に入ると、はやとがいた。
こころに近づき過ぎない離れた距離から、こころのほうをじっと見ていた。

「見つけてくれてありがとう。」

後ろからそう言った。

「え、あ、なんだお前かよ。びっくりした。」

そういう割には、あまり驚いてるようには感じなかった。

「ていら。お前ってやめて」

「なあ、ていら。こころの親って死んだのか?」

こころのほうを見ながらそう言う。

「なんで、そんなこと聞くの?」

「こころの近くで、女の人と男の人が泣いてる。ごめんね、ごめんねって。」

私には見えない。
見たくても何も見えない。

「はっきりとした容姿はわかんないけど、こころの名前呼んで泣いてる。辛い思いさせてごめんねって。負けないでって。ていらと幸せになってほしいって。」

「…まだ、そこにいるの…?」

はやとの答えを聞かないまま、こころのところに走った。
嘘か本当か確証はないけど、嘘をついてるようには思えなかった。

はやとも慌ててついてくる。

「ていら、貴女にまで辛い思いを背負わせてごめんなさい。こころを守ってくれてありがとう。ずっと、二人を見守っているからね。…女の人がていらのこと、抱きしめようとしてる。無理っぽいけど…」

目の奥があつくなる。
こころと一緒にいたから私まで泣き虫になったのかな。

おそらく…いや、確実にここにきている男女はこころの両親だ。

しばらくの間、私はそのまま動けなかった。

「…いなくなったぽいよ、」

「本当は…もっと前から見えなくなってたでしょ?」

「なんだよ、気づいてんのかよ」

なんとなくだけど、はやとが私の様子をうかがってたのがわかったから。
そんな気はしていた。はやとなりの優しさなのだろう。

「なんか感動的な場面だったみたいだけど、こころずっと寝てんじゃん。」

「確かに。でも、いつもより穏やかに寝てるから起きるまでこのままにしてあげたい」

こころ、ちゃんと見守ってくれてるみたいだよ。

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