日常(仮)
「さっき、こころの両親は死んだのかって聞いたよね。…生きてるよ。だけど、別の場所で生きてる。」

「生きてんのに、何?今の現象?てか、生きてんなら迎えに来ればいいじゃん。愛されてるみたいだし。」

「それは出来ないの。」

こころは、人間の子どもじゃない。
この世界でいう天使と悪魔の間にうまれた子供。
人間のイメージだと、天使と悪魔は相反する存在であり共存しているイメージはないかもしれないけど私たちの世界では一緒に生活もするし、仕事もする。
人間の幸の部分を調整するのは天使で、不幸の部分を調整しているのが悪魔。
その人間の決められた運命に沿って、調整を行う。
ただ、共存していく中でルールが存在した。

「天使と悪魔の間に子供を授かってはいけない」

差別によって、そういう決まりがあるんじゃない。
天使と悪魔の間に生まれるということは、天使と悪魔両方の力をもつことになる。
両者の力のコントロールは「感情」が大きく関わる。
コントロールをまともにできない者が両者の力を所持するということは、いつ大きな力が暴走してもおかしくないということだ。
私たちの世界の平和を守るために、作られた決まり。

こころの両親は、この決まりを破った。
こころを授かったことを隠し続け、こころを生んだ。

生むことはできたけど、すぐに見つかって問題になった。

そして、こころが生きるためにだされた条件。
「人間の世界で暮らすこと。ストレスや悪意を感じる環境で、感情が暴走することなく生きられたら、人間の世界での死後、戻ることを許す。」

人間の世界と私たちの世界は時間の流れに差があるから、こころが人間の世界で一生をすごしても、戻って両親にあうことはできる。

だから、こころは生まれてすぐ人間の世界に落とされた。
落とされるときに、チャンスを見計らって私もついてきた。

「こころ」は、両親がつけた本当の名前。
私は、二人が愛おしそうに名前を呼ぶところをそばで見ていた。
だから、こころと呼び続けた。とても大切な名前だったから。

けど、人間の世界でつけられた名前は「心愛」

ここまで長く説明したけど、こんなことはやとには教えない。
こころにだって、まだ何も言えてないのに他人に言うわけない。

「…ていら?」

「会いたくて会えるなら、こんなところいないでしょ。」

会わせてあげられるなら、とっくにそうしてる。
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