日常(仮)
「ここは、そんなに悪いとこじゃないと思うよ。」

はやとがそう言う。

「俺、1回死にかけたらさみんなには見えないようなものが見えたり、聞こえたりするようになったんだよね。」

さらっと、涼しそうな顔をして言う。
死にかけた、なんてはやとくらいの年齢の子が言うことじゃない。

「ずっと暗い部屋の中に一人だったから、話せる相手がいっぱいできたと思って嬉しかった。けどさ、周りから見たら俺は可哀そうな子だった。親に捨てられて死にかけて、独り言をいう子供。」

なんとなく、こころと近い環境を生きていたように感じた。
本人たちは真実をそのまま生きているのに、周りがそう生きることを許してくれない。

「だから、あの部屋でていらがしゃべったときも、あんまり驚いてなっかただろ?」

少し自慢げに話す。

「ここの施設の先生に言われたんだ。

きっと神様が特別な力をくれたんだね。
けど、はやと君は今、生きてるの。だったら、はやと君がいきてる世界の人たちとももっと関わる努力をしないと。
せっかく、いろんなものが見えるのに片方の世界につかってしまうしまうのは、もったいない。って。

なんとなくだけど、そうかもって思った。
一方的に可哀そうなやつに思われんのやだったし。
生きてるみんなとも、俺にしか見えてないようなやつらとも関わていきたい。
そう思えるようになった。」


強い子だと思った。
はやとの考えを変えるきっかけをつくったのは先生の言葉だったとしても、前を向いたのははやと自身だ。

こころも、はやとみたいに生きられたらいいのに。

そう思ってしまった。



「…ん、ていら…。え、…」

こころの目が覚めたみたいだ。
眠そうに目をこすっていたのに、はやとを見るなり目を丸くした。

< 13 / 52 >

この作品をシェア

pagetop