こんぺいとうびより
女性陣がトイレに行ってしまったので、エレベーターホールからオフィスまで一直と葉吉は並んで歩いた。

「・・・そう言えば。」

なんとなく気まずい沈黙を一直が破る。

「ん?」

「玉川さんがこないだのあっつ~いキスシーンを撮り損ねたらしいので、またして見せてあげてください。俺も見届けますんで。」

「なっ!なんでお前はいつも・・・。」

焦って軽くのけぞった葉吉に一直はじとっとした視線を送る。

「ノリノリだったくせに。」

「そんなことな・・・!」

「キスだけでいいのにその前後に抱きしめたり、キスめっちゃ長かったですし。皆に見せつけるの気持ち良かったですか?」

「~~っ、お前が(あお)ったんだろ!?」

頬を染めた葉吉と楽しそうな一直がオフィスに入ると、真中が珍しく真剣な表情で近づいてきた。

「おはよ。新貝、ちょっといい?」

「はい。じゃ、お願いしますね。」

一直は真中に返事をし、葉吉の方を見てさわやかに笑うと、さっそうと自席に行ってしまった。

「おい・・・。」

葉吉は一人困った顔で彼の後ろ姿を見つめていた。
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