こんぺいとうびより
23時にスマホのアラームが鳴る。

璃子が毎週楽しみにしている恋愛バラエティー番組が始まる時間だった。

「・・・あ、こんな時間か。」

いつもなら入浴後にお酒かホットドリンクを片手にキュンキュンしながらテレビを観るのが楽しみだった。

でも今はとてもそんな気分にはなれない。考えてみれば夕食もとっておらず、会社から帰宅した服装のままベッドに寝転んで天井を眺めていた。

『新貝さん、異動になるんですって。関西支社準備チームに。』

璃子の彼への気持ちを知っているからか、ひどく動揺していた彩木の声が頭によみがえる。

『通常は10月の人事異動は9月始めには内示があるみたいなんですけど、今回は支社準備チームにいた人が家庭の事情で急に退職することになって、急遽決まったそうです。支社準備チームは社長直属で、各部から選ばれたメンバーが集まって支社を開く為の準備をしていて・・・だから新貝さんも仕事ぶりを認められ選抜されたメンバーということで、支社に行ったらリーダー職が待ってるので、栄転なんですけど・・・でも、その、玉川さん・・・大丈夫ですか?大丈夫じゃないですよね!?』
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