こんぺいとうびより
しどろもどろになりながら説明する彼女の前で自分は固まっていたに違いない。

その後、どんな風に仕事をしたかとか、ランチに何を食べたかとか、何時に帰宅したかという記憶がない。

今日一日一直と顔を合わせることはなかった。

『おめでとうございます。』と連絡しようと思いスマホを持った記憶だけはある。でも指が固まってしまったようでスマホのロックを解除することが出来なかった。

───スマホ・・・どこだっけ?

さっきアラームが聞こえたので近くにあるのだろう。

ベッド近くに置いたバッグを見るとポケットに入ったままで、じっと見つめるが手に取る気にはなれなかった。

10分ほどそのままでいるとアラームのみ音が鳴るようにしているスマホが震え、ライトが光っていた。メッセージかなと思っていると長く震えていて、電話のようだった。

───時間が時間だし仲良い友達の誰かかな・・・多分酔ってるな。

寝転んだままうつ伏せになり手をバッグに伸ばしてスマホを取り出すと、画面には『新貝一直』という名前と、去年皆でバーベキューに行った時に二人で撮った写真が表示されていた。
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