キミと、光の彼方へ。
その日の放課後、私は担任の先生と二者面談をした。

5月に1回やり、夏休み前に1回やり、進路が不明瞭な人は親も交えて夏休み中にも1回やることになっている。


「桑嶋さんはやりたいこととかないですか?」

「そうですね......ないです」

「じゃあ、好きなこととか趣味とかは?」

「いえ、特にはないです」

「そう...。じゃあ、前々から言っているけど、とりあえず大学進学を考えてみたら?色々な人と出逢って見聞を広めることができるからね。桑嶋さんは成績も悪くないし、普通に私立の文学部くらいなら入れそうよ。国語なら私も教えられるしね」

「はい......」


歯切れの悪い返事に先生は困っているようだ。

困っているのはむしろ私の方で、何度も何度も同じことばかりしか言われなくて本当によく分からなくなってきた。

なんとなく誘導されているような気もするし、それに乗ってしまえば楽なのかもしれないけれど、でもそれでは私の努力が無駄になる。

変わろうとして傷付け、傷つけられて来たのに、前と同じじゃ納得出来ない。

だけど、どうしたら良いかも分からない。

ダメだと分かっていても解決策が見えない。

ずっと私は、深い深い海の底で静かに呼吸をしたまま、地上の光が射し込む場所へと泳いでいけない。

能無しの弱虫な魚だ。


「桑嶋さん」

「はい」

「夏休みはご両親とも良く話し合うこと。夏休みの最終週にまた面談しますから、それまでには自分の考えを明確にしておいて下さい」

「はい。貴重なお時間を頂き、ありがとうございました」


私はそう言い残し、面談室を去った。

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