キミと、光の彼方へ。
「桑嶋......」


うっすらと視界がよみがえり、微かに見えた。

私の右手は彼の頬に触れていた。

そして、その手を彼は強く握ってくれた。


「色々とおっせーんだよ」

「ごめん...」

「早くここ出るぞ」

「うん......」

「取り敢えず寒いからこれ来とけ」


しかし、私の震えは止まらない。

半袖短パンの部屋着のまま来てしまったことが仇となった。


「桑嶋、一応聞くが...抱き締めてもいいか?」

「えっ......あ、うん。お願いします...」


不思議なやりとりだったが、それがすごく懐かしかった。

私の名前をどう呼んだらいいか、聞いてきたり、"さん"を外していいか聞いてきたり。

そんなの自分で考えてよと言いたくなることを、この人は聞いてしまう人なんだ。

私はゆっくりと優しく抱き締められた。

あったかい......。

あったかいよ......。

その温もりに触れた瞬間、私の瞳から生ぬるい雫が1滴頬を伝った。

そして、雨と共に地面に染みていく。

私は雨の音と彼の心臓の音を聞いて、なぜだか涙が止まらなくなった。

とにかく泣いた。

溢れて止まらない涙を拭うことも、抑えようともしなかった。

だって、彼の背中も揺れていて、私の頭にも頬にも、雨とは違う水滴がポツポツと落ちてきていたから。

泣きたいなら泣くしかない。

お互いに理由が分からなくても、泣くしかない。

そうすることでしか、今の気持ちを表現出来ないから。

私はしばらく彼の胸に額を押し付けて泣いていた。

雨が止むまで、

声が枯れるまで、

ただひたすらに泣いていた。

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