二人の距離~やさしい愛にふれて~
理花は胸に顔をうずめて答えるからどんな表情をしているのか恭吾からは見えなかった。

「そもそも未成年だろっ、酒は辞めとけよ…」

「怖いの…お酒飲まないと。嫌な夢見るし…。消えてなくなりたくなるの。」

理花は消え入りそうな声で独り言のように話した。でもその声は恭吾にしっかり届いていた。

「一緒に寝てやるよ。昨日とかぐっすり眠ってただろ?毎日ここに帰ってくるから。」

「…なんで?ほっとけばいいのに…」

「ほっとかないよ。」

恭吾は力いっぱい理花を抱きしめた。あまりにも細すぎる理花の身体は今にも折れそうだった。

その夜は恭吾に抱きしめられたまま理花は眠った。不思議と恭吾の腕の中では嫌な夢を見ずに眠れる。

翌日は恭吾も居酒屋のバイトがあり日付が変わる時間にようやく理花の家に着いた。
正直、理花が待っていてくれるとは思っていなかった恭吾はダメ元でオートロックのモニターに部屋番号を入力し、呼び出しボタンを押した。

『どうぞ。』

モニターから理花の声がすると目の前の自動ドアが開いた。
恭吾は理花が約束通り待っていてくれたことへの安堵感とくすぐったいような喜びを
感じていた。

エレベーターを降りると、理花はドアを開けて待っていた。

「おかえり?なのかな?」

「ハハッ、ただいま。なんか食べた?」

理花は恭吾を迎え入れると胸のくすぐったさと照れで俯き加減で部屋に入った。

「食べてない…夕方にビール飲んじゃた…」
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